昔できたことは、10年経ってもできる。
……そんなに甘くありませんでした(笑)。
40歳のおっさん、リターンライダーとしての練習開始です。
第二章 リターンライダー編
まずは近所で練習しよう
待ちに待ったYZF-R25が納車された。
10年ぶりに聞くエンジン音。
10年ぶりに感じる風。
「やっぱりバイクはいい。」
そう思った。
とはいえ、いきなり遠くへツーリングに行く勇気はない。
20代の頃はシャドウ400、CB1300SB、そしてCBR1000RRと乗り継いできた。
大型バイクにも乗っていたんだから、250ccくらい余裕だろう。
……なんてことは全くなかった(笑)。
10年のブランクは想像以上。
まずは近所を走って、少しずつ感覚を取り戻すことにした。
久しぶりのクラッチ操作
ヘルメットをかぶる。
グローブを着ける。
キーを回してエンジンをかける。
クラッチを握る。
1速へ入れる。
ここまでは大丈夫。
問題はここから。
「よし、発進。」
クラッチをゆっくりつなぎながらアクセルを……
ブォォォン!
「いや、回しすぎ(笑)。」
10年前なら何も考えずにできていたクラッチ操作。
久しぶりだと、アクセルとクラッチの加減が分からない。
エンストしたくないという気持ちが強すぎるのか、必要以上にアクセルを開けてしまう。
ちょっと恥ずかしい。
でも、これも練習。
何度か発進と停止を繰り返しているうちに、少しずつ感覚が戻ってきた。
直線は意外と大丈夫
走り出してしまえば、意外と普通に乗れる。
1速。
2速。
3速。
そして4速。
久しぶりに左足でシフトアップしていく感覚が懐かしい。
そして、もう一つ驚いた。
「250ccって、こんなに速かったっけ?」
昔は400cc、1300cc、1000ccと排気量の大きなバイクに乗っていた。
だから250ccと聞くと、正直もっと非力なイメージを持っていた。
でも、YZF-R25は違った。
車体が軽い。
アクセルを開ければ気持ちよく加速する。
近所を普通に走るには十分どころか、思っていた以上に楽しい。
「これくらいが今の自分にはちょうどいいかもしれない。」
そんなことを思いながら走っていた。
問題はカーブだった
直線はいい。
発進も少しずつ慣れてきた。
ギアチェンジもできる。
「意外と乗れるじゃん。」
少し調子に乗り始めた、その時だった。
カーブがやってきた。
スピードを落とす。
曲がろうとする。
でも……
怖い。
「あれ?」
「バイクって、こんなに傾けるんだっけ?」
頭では分かっている。
バイクは車体を傾けて曲がる乗り物だ。
20代の頃なら、そんなことを考えることすらなかった。
自然に減速して、
自然に車体を傾けて、
自然に曲がっていた。
ところが10年ぶりだと、その「自然」がない。
車体を傾けることに、体が抵抗する。
ほんの少し傾けるだけでも怖い。
カーブが近づくと、必要以上にスピードを落としてしまう。
そして曲がり始めても、
「もっと傾けて大丈夫なのか?」
と不安になる。
その結果、思っていたより大回りになる。
20代の頃には意識すらしていなかった「曲がる」という動作が、こんなに難しく感じるとは思わなかった。
当然、無理はしない。
ゆっくり。
少しずつ。
「今日は練習なんだから。」
自分に言い聞かせながら、一つずつカーブを曲がっていった。
Uターン?
途中で、
「Uターンもやってみようかな。」
と思った。
……
やめた(笑)。
今の自分にはまだ早い。
低速でバランスを取りながら、ハンドルを切って車体を傾ける。
想像しただけで怖い。
できるかもしれない。
でも、今やる必要はない。
無理をして倒したら、納車したばかりのR25が傷だらけになる。
「Uターンは、もう少し慣れてから。」
40歳のおっさん、冷静な判断である(笑)。
20代の頃なら、
「いける、いける。」
とやっていたかもしれない。
でも今は違う。
無理をしない。
できないことを無理してやらない。
これも40代になったということなのかもしれない。
ニュートラルとの戦い
そして、もう一つ苦戦したものがある。
ニュートラル。
信号で停止。
1速。
「ニュートラルに……。」
カチッ。
2速。
「あ。」
もう一度。
カチッ。
1速。
「……。」
また上げる。
ようやく、
N
の表示。
「入った!」
たったニュートラルに入っただけなのに、ちょっと嬉しい(笑)。
これも何度か繰り返しているうちに、少しずつ感覚が戻ってきた。
昔、無意識にやっていた操作を一つずつ思い出していく。
まるで自分の中に眠っていた記憶を、一つずつ起こしているようだった。
気づけば1時間
「ちょっと近所を走るだけ。」
そのつもりだった。
気づけば約1時間走っていた。
久しぶりのクラッチ操作。
ギアチェンジ。
カーブ。
信号。
そして周囲の車。
バイクに乗っている間は、とにかく集中していた。
そして自宅へ到着。
バイクを停める。
エンジンを切る。
ヘルメットを脱ぐ。
その瞬間。
「疲れたぁ……。」
たった1時間。
それなのに、ものすごい疲労感だった。
昔なら1時間なんて、ツーリングの始まりにもならなかったはずなのに(笑)。
体力が落ちたのか。
ずっと緊張していたからなのか。
たぶん、両方だ(笑)。
でも、やっぱりバイクは面白い
疲れた。
カーブは怖かった。
クラッチ操作もぎこちなかった。
ニュートラルにもなかなか入らなかった。
Uターンなんて、まだやりたくない(笑)。
それでも。
家に帰って最初に思ったのは、
「やっぱりバイクって面白いな。」
だった。
上手に乗れなくてもいい。
昔のように速く走れなくてもいい。
今の自分のペースで、もう一度覚えていけばいい。
そして改めて思った。
「このバイク、買ってよかった。」
次は、もう少し走ってみたい
近所を1時間走っただけ。
それでも、最初に家を出た時よりは少しだけ感覚が戻ってきた気がする。
次はもう少し距離を伸ばしてみたい。
そして、カーブを曲がる感覚も少しずつ取り戻したい。
そう考えると……
やっぱり次は、
峠道。
もちろん、速く走るつもりはない。
無理に車体を傾けるつもりもない。
安全第一で、カーブを曲がる感覚を少しずつ取り戻したい。
10年のブランクは、一日では埋まらない。
でも、それでいい。
少しずつできることが増えていく。
それもリターンライダーの楽しさなのかもしれない。
40歳のおっさんのバイクライフは、まだ始まったばかりだ。
📝 今回のひと言
「昔の自分に戻らなくてもいい。今の自分で、もう一度楽しめばいい。」
次回予告
【第10話】いざ峠道へ!40歳のおっさん、10年ぶりのワインディングに挑む。
近所での練習を終え、次はいよいよ峠道へ。
家から峠までは約30〜40分。
一般道を走りながら少しずつ感覚を確かめ、いよいよ最初のカーブへ。
ところが――。
「怖くて減速しすぎる。」
「思ったよりラインが膨らむ。」
「上りは2速? 3速?」
そして下りでは、思った以上にスピードが出てさらに怖い(笑)。
それでも走っているうちに、少しずつYZF-R25を傾けられるようになっていく。
目的は速く走ることではない。
「安全に曲がる感覚を取り戻すこと。」
10年前と変わらない峠道で、40歳のおっさんは昔の感覚を取り戻せるのか。
第二章「リターンライダー編」。
次回、本格的なワインディング練習開始です。
40歳のおっさんのバイク復活計画 第9話 完


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